変異原性


魚肉ペプチドの変異原性試験

実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授

魚肉ペプチドに変異原性はない

【目的】
 変異原性物質とは自然突然変異よりも高い頻度で突然変異を誘発する化学物質のことで、一部の食品添加物や加熱処理した食品中にその存在が報告されている。発がん性物質のほとんどが変異原性を示すことから、変異原性試験は安全性試験方法の一つとして化学物質、医薬、食品、飼料などの分野で広く行われている。本研究では、魚肉タンパク質を酵素で加水分解後、凍結乾燥あるいは加熱乾燥して得られた魚肉ペプチド粉末 (FP)の変異原性について検証した。


【方法】
 FP水溶液中には遊離のヒスチジンおよびトリプトファンが存在し、Ames試験では変異原性の正確な判定ができないため、ヒスチジン含有物質でも試験可能であるumuC’−’lacZ融合遺伝子を導入したサルモネラ菌を用いる短期変異性試験umu(ウム )試験(試験管法)を採用した。また、試料検体が体内で代謝されて初めて変異原性を示す場合を考慮し、ラットの肝臓から調製したS9Mixを加えて代謝活性化したもの (+S9)と代謝活性化しないもの(−S9)についてそれぞれ測定した。陽性対照物質として、2-Aminoanthracene(2AA,+S9用)及びFurylfuramide(AF−2,−S9用)を用いて評価系の確認をした。試料検体は魚肉タンパク質を酵素分解後、凍結乾燥粉末化したものおよび加熱乾燥粉末化したものについてそれぞれ評価した。


【結果】
■ 魚肉ペプチド凍結乾燥粉末(a)および加熱乾燥粉末(b)の変異原性判定

凍結乾燥粉末では全濃度で溶媒対照(被検物質濃度0μg/mL)の620nmにおける吸光値の1.5倍以下であった。加熱乾燥粉末では溶解度が低いためか、500μg/mLで混濁がみられたために吸光値が高く2.0倍近くまで上昇した。ウム試験による陽性判定は、溶媒対照吸光度の2倍以上を呈した場合とすることから、 FPの変異原性は製造方法によらず陰性であると判断された。


【まとめ】
短期変異原性試験であるウム試験の結果、FPは凍結乾燥で製造しても加熱乾燥で製造しても変異原性はないことがわかった。