疾病予防1


魚肉ペプチドの抗ガン効果に関する研究

実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授

【背景】
我が国で悪性新生物(ガン)が死因1位になって四半世紀が経過した。これまでに水産物摂取と種々のガン発症の関係が研究されており、水産物由来のドコサヘキサエン酸(DHA)などn-3系高度不飽和脂肪酸(n-3PUFA)がエイコサノイドやサイトカインの生成、免疫系に影響し、種々のガン発症に抑制的に働いていることが解明されてきている。しかし、水産物の有するガン抑制効果は魚肉の主成分の一つであるタンパク質にも同様の効果があることを福永らは確認している。そこで、本研究では魚肉ペプチド(FP)の抗ガン効果について検証した。

【方法】
実験動物 ガン研究に多用される6週齢雄BALBc/nunuマウスを用いた。
5週齢時点で全個体平均体重が0.3×標準偏差のマウスを選出し、腰部にSP2マウス骨髄腫細胞(1.5×106/0.1ml/個体)を105匹に対して移植した。腫瘍移植後7日経過時点で移植細胞が定着していることを確認し、60匹を選出した(各群20匹)。
実験餌料 離乳直後からAIN93G標準餌料で5週齢まで馴化飼育した後、餌料中のカゼインをFPに置換し、餌料重量の2.5または10%(w/w)となるように調製したものを給餌した。
検査測定 試験餌料給餌開始後21日まで体重、腫瘍重量の変化を記録し、その後死亡に至るまでの日数を記録した。腫瘍増殖抑制率(%)=100(1-T/C)[T:FP給餌群平均腫瘍重量 C:対照群平均腫瘍重量]


【結果】
給餌開始から21日経過時点までに次のような変化が観察された。

1) FP投与群は対照群に比べ14日までは体重増加が高い傾向にあり21日までは体重減少が軽減した(図1)。

2) FP投与群は腫瘍重量の増加が抑制されることが認められた(図2)。

3) 7、14、21日後の腫瘍増殖抑制率はFP高投与群では、移植後の日数に関わらず高かった。FP低投与群で抑制率が低下したのは、腫瘍の増殖力が上回った結果であると考えられる(図3)。

4) 腫瘍移植マウスの生存期間は、どこでエンドポイントをとってもFP高投与群で延長されていた(図4)。
 

 


【まとめ】
FP投与群ではコントロールと比べて腫瘍重量が少なく、生存期間も増加することから、FPには抗ガン効果あることがわかった。