疾病予防3


老化促進マウス(SAMマウス)に対する魚肉ペプチドの影響−βアミロイドの低減−

実験協力&データ提供:神奈川歯科大学 生体管理医学講座 薬理学分野・ESR研究室 李昌一教授
魚肉ペプチドがアルツハイマー病抑制作用をもつ可能性がある

【背景および目的】
これまでに魚肉タンパク質を酵素により分解した魚肉ペプチド(FP)は、抗酸化能が大豆ペプチドよりも高く、高血圧自然発症ラット(SHR)の脳内酸化ストレスを有意に低下させることがわかっている(抗酸化の項目を参照)。本研究ではさらに老化に対する影響を調べるために、老化促進マウス(SAM)を用いて、その脳内酸化ストレスレベルおよびアルツハイマー病の原因の一つと考えられているβアミロイドの蓄積に対するFPの影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】
実験動物 SAMP8、雄、20週齢
SAMP(Senescence-Accelerated Mouse Prone)系統のマウスは老化アミロイドーシス、学習・記憶障害、老年性骨粗鬆症および白内障等の老化関連病態を系統特異的に発症し、短寿命である。
FP給餌 10%の割合で通常粉末餌料にFPを混和し、10週間連続摂取させた。
また、Controlとして通常粉末餌料を摂取させた。
脳内酸化ストレス解析 ESR(電子スピン共鳴; Electron spin resonance)法
ネンブタール麻酔後、頚椎脱臼を行い、断頭した後脳を摘出。摘出脳を用いてL-band ESR 2D slice画像の構築を行い、そのデータを基にESRスピンプローブ剤であるMC-PROXYLの減衰速度を算出した。
βアミロイド蛋白(Aβ1-40)解析 ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay:酵素免疫測定)法
脳摘出と同時に頚部動静脈より血液を回収(ヘパリン10μl/ml)。5000×g、4℃で15分間遠心分離を行い、血漿成分を回収。その後、Wako Human/Rat βAmyloid(40) ELISA kit IIを用いて蛋白量の解析を行った。


【結果】
・ESR法を用いてSAMマウス脳内の酸化ストレスに対するFPの影響を解析した結果、有意差は得られなかった(図1)
・ELISA法を用いて血液内のβアミロイド蛋白量を解析した結果、Controlと比較してFP摂取群では有意にβアミロイド蛋白の減少が認められた(図2)
 

【まとめ】
アルツハイマー病の発症や、それによる神経細胞死には活性酸素種の関連が考えられており、βアミロイド蛋白もまたそれに関係している。FP摂取によりSAMマウス脳内での酸化ストレスが軽減し、βアミロイド蛋白の生成も有意に抑制されるという結果から、FPを摂取することによりアルツハイマー病の発症・増悪を抑制できる可能性が示唆された。