疾病予防4


魚肉ペプチド給餌による免疫増強作用

実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授
魚肉ペプチドには免疫増強作用がある

【背景】
これまでに移植癌モデルマウスにおいて、魚肉ペプチド(FP)給餌により腫瘍の定着が抑制されることが確認されている。本研究では、FPのガン抑制効果に関する研究の一環として、実験的免疫不全誘導マウスの抗体産生能に及ぼす影響について検討した。


【方法】
実験動物 8週齢のBALB/cAJcl雄マウスを用いた。飼育に関しては移植ガン実験と同様に12時間おきの明暗サイクル、温度、湿度が制御された環境化で餌および水は自由摂取とし、1週間の馴化後、実験に供した。免疫不全状態の作出には、マイトマイシンC(MMC)を用い、MMC 1mg/kg体重の用量で7日間連続腹腔投与した。対照群には等量の生理食塩水を投与した。
試験餌料 AIN93G組成に従い、標準タンパク質であるカゼインの一部をFPで置換し、餌料重量に対して2.5%または10%(w/w)となるようにFPを添加したものを試験餌料とした。
試験群の給餌条件 各群10匹に離乳直後から、標準餌料(AIN93G)または試験餌料を給餌し、8週齢になるまで飼育した。MMC処置後は、標準餌料を給餌した群をMMC-1、継続して試験餌料を給餌した群をMMC-2とした(図1)。
測定・検出 MMC投与終了後2週目における脾臓重量の測定とマウス脾細胞を用いて免疫増強の指標となる抗体産生細胞(PFC)の検出を行った。


【結果】
対照群におけるPFCは452±82個検出されたのに対して、対照群MMCは89±15個で、MMCによる免疫抑制が確実に起こり、回復途中であると判断できる。FP2.5および10%MMC-1群では、対照群MMCに比べ、有意に回復がはやく、10%でより回復が早いことが分かる。これらの結果は、MMCによって低下したPFC産生能がFPをあらかじめ給餌することによって回復が早くなることを示している。また、MMC処置後も各試験餌料を給餌したFP2.5%MMC-2およびFP10%MMC-2群ではMMC-1群に比べて、より回復が早いことが分かる。FP10%MMC-2群は、ペプチドMMC-1群に比べても有意に回復が早く、FPの免疫回復効果は、継続的給餌によってより高められることがわかった(図2)。

【まとめ】
本研究により、FPの摂取によりマウスの免疫回復が早くなることが分かった。